アフターマーケット別冊

今こそ特定整備の話をしよう

A4判 32頁
600円+税(送料別)
(2020年3月25日発行)

整備業界の最大の関心事である「特定整備制度」が2020年4月より導入されます。
自動車業界が「100年に一度の大変革期を迎えた」と言われるようになって数年が経過しました。誰もが変化の波を「何となく認識している」ものの、「実感するまでには至っていない」のが実態ではないでしょうか。そういう意味では、導入以前から多くの整備事業者に不安や困惑を生じさせている特定整備制度は、自動車業界ではじめて顕在化した「100年に一度の大変革」と言うことができます。
しかし、多くの整備事業者が「よくわからない」と漏らすように、特定整備制度に関する理解は今一歩です。また補修部品販売事業者も、顧客である「整備事業者の一大事」という認識はあるようですが、自身にとっても一大事になりかねないことには考えが至っていないようです。
本書は、特定整備制度についてわかりやすく解説するとともに、補修部品業界への影響についても予測してみました。

特定整備のポイントが5分でわかるCONTENTS

はじめに 特定整備には知識と技術、責任が必要です
《Point》
今後ますます電子制御化が進む自動車の点検・整備を担う整備事業者は、これまでよりも高度で広範な知識と技術が求められるのはもちろん、大きな責任を背負うことになるでしょう。

第1章なぜ、特定整備制度を導入する必要があるのでしょう
《Point》
すでに電子制御装置の故障や不具合に起因する事故やトラブルが報告されています。今後、運転支援技術や自動運転技術の普及が進めば、このような事故やトラブルが増えるのは必至です。一方、既存の分解整備制度では「電子制御装置の整備作業の適切性が確保される」とは言いきれません。特定整備制度が導入されるのはそのためです。

第2章新たに特定整備の対象となる作業は何でしょう
《Point》
保安基準の対象装置であるもののうち、運行の安全に直接関連し、整備作業の難易度が高いものとして、「?自動運行装置の取り外しや作動に影響を及ぼすおそれがある整備または改造」「?衝突被害軽減制動制御装置(いわゆる自動ブレーキ)および自動命令型操舵機能(いわゆるレーンキープ)に用いられる、前方をセンシングするための単眼・複眼のカメラ、ミリ波レーダー、赤外線レーザーの取り外しまたは機能調整(ECUの機能調整を含む)」が新たに特定整備の対象作業となります。さらに、「?カメラやレーダーなどが取り付けられているフロントバンパーやフロントグリル、フロントガラスの脱着行為」も、その後のECUの機能調整が必要となるため、特定整備の対象作業となります。なお、これらを総称して「電子制御装置整備」と呼びます。
ただし、「保安基準の対象装置であるもの」とされているように、保安基準が適用されていない電子制御装置は対象外です。乗用車の自動ブレーキは2020年1月に保安基準が設定されたばかりであり、すでに日本中を走りまわっている自動ブレーキ搭載車の大半は特定整備の対象外となります(大型車は先行して保安基準が設けられ、義務付けもはじまっています)。そのため、特定整備制度が導入されても、当面は新たに特定整備の対象となる作業はほとんどないのが実態です。

第3章特定整備の認証は3つのパターンが設けられます
《Point》
特定整備に該当する作業を事業として行う場合は、地方運輸局長の認証を受ける必要があります。特定整備の認証は「?既存の分解整備に該当する作業のみを行うパターン」「?新たに特定整備の対象作業となる電子制御装置整備のみを行うパターン」「?両方を行うパターン」の3パターンが設けられます。

第4章電子制御装置整備の要員に関する認証基準は何でしょう
《Point》
既存の分解整備に該当する作業のみを行う場合は、要員に関する認証基準は従来どおりです。一方、新たに特定整備の対象作業となる電子制御装置整備のみを行う場合は、「自動車整備士の最低要件」が緩和されます。分解整備の認証基準では「少なくとも1人は1級または2級の自動車整備士技能検定に合格した者」とされていますが、電子制御装置整備に関しては、国土交通大臣が定めた一定の基準を満たす講習を受講し、一定の技術を習得すれば、「自動車電気装置整備士」や「自動車車体整備士」も自動車整備士として扱われることになります。整備主任者の資格要件も同様です。
電子制御装置整備に相当する自動ブレーキ搭載車のフロントバンパーやフロントガラスの脱着・交換を、すでに事業として行っている車体整備事業者やガラス施工事業者が、特定整備の認証を取得しやすいように配慮されたものと思われます。

第5章電子制御装置整備の設備に関する認証基準は何でしょう
《Point》
作業場は「1車種でもエーミング作業が行える最低限の寸法」が用意できれば大丈夫です。また、「水準器」の保有を義務付けることにより、作業場は必ずしも水平ではなく、平滑であれば問題ないことになりました。もちろん、整備用スキャンツールの保有も義務付けられますが、現状ではすべてのメーカー・車種に対応する汎用スキャンツールがないため、「少なくとも1車種以上の車両でECUの機能調整などが行えるもの」で構いません。その結果、「入庫車両に対応するスキャンツールがなくて整備できない」という事態が発生することが予想されるため、中間とりまとめでは「2台目以降については、共同で保有しているスキャンツールの使用を認めることが適切である」とされています。

第6章「離れた作業場」や「共用設備」でも認証は取得可能です
《Point》
電子制御装置整備を事業として行うには「電子制御装置点検整備作業場」と「車両置場」が必要になります。しかし、例えばバンパーやガラスの交換作業は、その後のエーミング作業やECUの機能調整が適切に行われることが重要であり、必ずしも認証要件をかけている作業場で交換作業を実施する必要はありません。また、入庫車両によってはより広い作業場での整備作業が必要となる場合が想定されます。
そのため、既存の分解整備の認証は「整備作業は同一敷地内で行われる前提」で制度が構築されていますが、電子制御装置整備の認証に関しては「柔軟な運用」が認められています。具体的には、認証の取得に際して「離れた作業場」や「設備の共用」が認められます。

第7章認証取得のための準備期間(経過措置)が設けられます
《Point》
特定整備制度は2020年4月1日よりスタートします。しかし、「経過措置」が設けられ、改正法の施行に際して、現に電子制御装置整備に相当する作業を事業として行っている整備事業者であれば、改正法の施行日から起算して4年を経過する日までの間は、認証を受けるための準備期間として、引き続き電子制御装置整備に該当する作業を事業として行うことができます。
当然、電子制御装置整備に相当する作業を行っていなかった整備事業者は、2020年4月1日以降、保安基準が適用された電子制御装置の整備は行えません。事業として行った場合は「未認証行為」で道路運送車両法違反となります。

第8章1年ごとに「OBDの診断の結果」の点検が義務付けられます
《Point》
近年は、自動車の各構造装置が電子的に制御されるようになり、電子的な状態を確認する点検・整備の重要性が高まっています。そのため、これまで各構造装置の摩耗・損傷といった外観を点検する項目が主だった「自動車点検基準」が改正されることになりました。
具体的には、電子制御装置の状態が点検できるように、「OBD(車載式故障診断装置)の診断の結果」がその他の点検箇所の点検項目に追加されます。2024年より開始予定のOBD検査の対象外とされている、大型特殊自動車、被牽引自動車、二輪自動車を除いた自動車が対象で、1年ごとに点検することが義務付けられ、2021年10月に施行されます。

第9章顧客の一大事なので補修部品販売事業者も影響必至です
《Point》
自動車業界が「100年に一度の大変革期を迎えた」と言われるようになって数年が経過しました。誰もが変化の波を「何となく認識している」ものの、「実感するまでには至っていない」のが実態ではないでしょうか。そういう意味では、導入以前から多くの整備事業者に不安や困惑を生じさせている特定整備制度は、自動車業界ではじめて顕在化した「100年に一度の大変革」と言うことができます。
当然、整備事業者の一大事であるならば、整備事業者を顧客とする補修部品販売事業者にも何らかの影響が及ぶのは必至です。