補修部品流通業界の説明不足
万全の物流、見えない「部品供給システム」が、一方で誤解を招いている

 最近、自動車業界内において補修部品への関心が高まっている。
 この背景には一昨年来の日米自動車部品協議で補修部品が取り上げられたことが大きいと思うが、それだけではない。整備業界では新車両法の施行が、ディーラーでは新車販売の低迷と競争激化が、部品メーカーでは国内自動車生産の縮小がアフターマーケットヘの関心を高め、販売していく商品として「補修部品・用品」に注目しているのである。
 これは長い間、目立つことが少なかった補修部品流通業界にとっては、嬉しい事に違いない。が、実は喜んでばかりいられない事態が一方で進行しているのである。
 それは、かなり多くの人が「補修部品の流通業界は何か怪しい」と疑いの目を持って見始めているようなのだ。もっと具体的に言えば「不合理で非効率的な仕事をしている」「高い部品を売り付け儲けている」「たいした努力もせずに利益を得ている」といった疑いである。
 長い間、取引きのある顧客から突然呼び出されて「部品が高すぎるから値下げせよ」と言われたり、大口需要家が部品メーカーを呼んで直接仕入れる方法はないかと尋ねたり――という話しを一部の例であろうが、最近耳にするようになった。
 何故、こんな事になってしまったのだろう。これは補修部品流通業界の人達が、自分達の仕事の内容を顧客に分かりやすく説明し、理解して戴く努力を長い間怠って来たことが最大の原因だと思う。
 多くの顧客にとって「部品」は「注文すれば届けられるモノ」としてしか意識できない。自分達の手元に正確・迅速に、さらに出来るだけ経費を掛けずに部品が届くには、どのような供給システムが必要なのか、知らされていないし、想像も出来ないのである。
 自動車補修部品は並べておけば自然に売れていく食料品や雑貨とは違う。例えばマヨネーズは、Aという主婦が買っても、Bという主婦が買っても同じ商品で問題がない。ところがディスクパッドはAとBの保有する車両により、それぞれ別の商品が必要なのだ。
 これは車両毎にエンジン出力、重量、前後のバランス、運動特性等が異なるわけだから仕方がない事である。さらに、ブレーキ鳴きを気にするユーザーも多いので、同じサイズの商品でも材質を変えたものを用意しなければならない。
 補修部品の需要発生の源は事故車の修理にしろ、車検整備にしろ、軽整備にしろ、一人一人のユーザーが保有している車両であり、対象となる車種・車型が明確に限定されている。そこで、需要の発生した車種の情報をもとに該当する部品番号を検索し在庫を確認の上、発注する業務が必要となる。
 また、需要は稼動中の車両の全体から発生する。売れ筋の新しい車両の補修部品だけを取り揃えておけばよいと言う訳にはいかない。
 さらに自動車は生活に密着した道具であり、部品の注文は緊急を要する場合が殆どである。需要に的確に応えるためには各地域に部品デポと配送体制が必要になる。
 現在の補修部品流通は、過去数十年間にわたる保有台数の増加、部品点数の増加に対応し「正確・迅速な部品供給をどのように実現するか」をテーマに常に見直しを行い、改善を続けながら形成されて来たものだ。その努力の結果実現した、多くの顧客の手元に「必要な部品が迅速・的確に届けられる」体制は、まさに空気のように当り前となったが、一方で空気のように「気にならない存在、見えないシステム」となっているのである。
 そして補修部品流通業者も自分達の仕事を通しての付加価値を顧客に説明する努力を怠ってきた。そのため未だに部番翻訳料、事故車部品見積り料、配送料等の料金を請求できない状態になっている。
 これらのサービス料金は部品代の中に含まれているのだろうか。例えそうでも、料金として請求されなければ、顧客にとっては見えないサービスなのである。
 補修部品は「鉄の固まり」と思われているが実は食料品と同様に賞味期限付きの商品が多い。また保有構造、需要構造の変化により売れ筋商品も常に変化する。こうした仕事の特性が「見えない」と、単に右のものを左に動かしているだけにしか映らないのである。
 「部品は縁の下の力持ち」では済まなくなっている。見えないシステムを顧客に見えるようにする説明や自己主張が必要とされているのである。
(編集長 白柳孝夫)

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