世界は確実に「新世代自動車」の本格普及時代に踏み出している

本年上期に経済産業省から次世代自動車に関する2つの報告書が発表された。
1つは5月に発表された「次世代自動車・燃料イニシアティブとりまとめ」(次世代自動車・燃料に関する懇話会)である。
これは昨年末の経済財政諮問会議で経済産業省から発表された「次世代自動車・燃料イニシアティブ」に基づき、本年1月に経済産業省、日本自動車工業会、石油連盟の三者による懇談会を立上げ、その具体化の検討を開始、その議論の結果を報告書にとりまとめたものだ。
この報告書ではエンジン、燃料、インフラ革新に関する以下の5つの戦略と2030年に向けたロードマップが発表されている。
●エンジン革新
1.バッテリー
07年より次世代バッテリー技術開発プロジェクトをスタートさせる。10年にコンパクトEV、年にプラグイン、30年にEV車の本格普及を目指す。
2.水素・燃料電池
大型予算(07年度320億円)を組んで燃料電池研究開発プロジェクトをスタートさせる。年までにガソリン車並みの低価格を目指す。
3.クリーンディーゼル
09年以降、世界で最も排出ガス規制が厳しい日本市場にもクリーンディーゼル乗用車を本格導入する。
●燃料革新
4.バイオ燃料
バイオ燃料技術革新協議会を設置して産学官が連携して次世代バイオ技術開発を加速化させる。15年に国産次世代バイオ燃料1L=100円〜40円を目指す。なお、国産バイオ燃料は食料との競合を避け製材工場等からの残材、稲藁などを利用したセルロース系エタノール製造技術開発を進める。
●インフラ革新
5.世界一やさしい車社会構想
現状ではETC等、エネルギー戦略としてのITSを推進している。今後は次世代自動車技術、IT、インフラ整備を融合させた取組みを実現。08年から自動車社会関連技術開発プロジェクトの新設を目指す。30年までに都市部の平均走行速度2倍を目指す(現状では東京時速18km、パリ26km)。

新世代自動車の本格普及に向けて

2つめの報告書は6月末に発表された「新世代自動車の本格普及に向けた提言」である。
06年4月、経済産業省は次世代バッテリーの実用化に取組むべき課題を洗い出すことを目的に「新世代自動車の基礎となる次世代電池技術に関する研究会」(メンバーは学識研究者、自動車メーカー、電池メーカー等)を発足させた。
この研究会は06年8月に「次世代自動車用電池の将来に向けた提言」を発表したが、今回の報告書はこれに続くものだ。
昨年の報告書ではバッテリー搭載車(EV、ハイブリッド、燃料電池自動車等)をガソリン自動車並みに普及させるためには、15年までにバッテリーの性能を1.5倍に、コストを7分の1まで下げ、さらに30年までに性能を7倍、コストを40分の1にしなければならないと提言している。
本年の報告書は欧米、アジア諸国の研究動向を紹介しながら、今後、わが国がこの分野で国際競争に勝つためには産官学の新たな連携体制の構築が必要であり、技術開発戦略、制度整備戦略、普及促進・普及啓発戦略を総合的に推進する必要があると提言している。

2つの報告書を読むと、世界は確実に次世代自動車の本格普及に向けて動き出していることが分かる。それほど、原油価格高騰、地球温暖化の進行が深刻ということである。(編集長・白柳孝夫)