メンテナンスの必要性を再認識すべき時

「昔はラジエーターホースやブレーキホースも定期交換部品だった」と言えば、「へー、そうだったの」と驚かれてしまう昨今ではあるが、ホースも車齢10数年を遥かに越えたある日、突然、劣化し崩壊が始まると言う。日本には車齢15年を越える車両が登録車だけでも90万台強存在する。
「まるで、光を浴びて崩壊するミイラのようだ」と、その体験者は語る。ある日突然、エンジンルームの様々なホースのヒビが入り、穴が開き始める。寿命が来たのである。
いくらゴム部品の耐久性が向上したとは言え、半永久的に持つわけではない。
2005年の11月に消費生活用製品安全法に基づく緊急命令が発動され回収等を行った松下電器製FF式石油温風暖房機事故も給気エアホースの亀裂が原因であった。ホースに穴が開くことで不完全燃焼となり、一酸化炭素が発生したのである。
このエアホースの材質がオゾン等により劣化しやすい材質(NBR製)であったことが原因であると特定されている。
しかし、20年も経てばホースの素材に問題が無くても、様々な要因で穴が開く可能性はいくらでもありそうな気がする。
◆メンテナンス意識の衰弱
部品の耐久性が向上し、製品の品質が格段に良くなったことから、消費者のみならず、販売事業者も、修理事業者も製品のメンテナンスに対する意識が衰弱しているように感じる。
シンドラーのエレベーター事件や吹田市の遊園地・エキスポランドで起きたジェットコースターの脱線死亡事故でも、杜撰なメンテナンス体制が問題となった。
そもそもメンテナンスは万一に事故を予防するために実施するもので「製品の品質が良くなったから不要」という性格のものでは無いはずだ。
◆製品安全自主行動計画
こうした中で、経済産業省から事業者に「製品安全自主行動計画作成のためのガイドライン」が配布された。
昨年の臨時国会で「消費生活用製品安全法」が改正された。
これは重大な製品事故が発生した際、メーカーや輸入事業者に国への事故報告を義務付けるものだ。国は、こうした事故情報を迅速に消費者に周知することとなっている。
しかし、これは製品事故が起きてからの対応であり、その前に事故を起こさないような製品を開発・製造し、こうした商品を選んで販売し、消費者の製品安全を第一に考えてメンテナンスを行うことが必要だ。
そのために、社内に展開する行動指針の「ひな形」をガイドラインとして各事業者に配布したわけである。
一例として販売事業者に係わる自主行動指針には。
・高性能な製品や安価な製品を販売することを追求するだけではなく、消費者に安全な製品を販売し、安全・安心な社会を構築するといった社会的責任を十分に認識し、経営の基本方針に「消費者重視」、「製品安全の確保」を掲げ、経営者自らの言葉として、その方針を具体化したメッセージを社員に発すること。
また、修理・設置工事事業者に係わる自主行動指針には、
・安全性レベルが低下する修理・設置工事は消費者の希望があったとしても絶対に行わない等、施工者のモラルを維持すること。
・製品事故等の情報を基に、修理・設置工事方法にフィードバックすることにより、継続的に製品安全を向上させること。
等が記されている。
当然の事が、当然ではなくなっている現在、全事業者が、こうしたテーマに自主的に取り組むことは必要だと思う。
(編集長・白柳孝夫)