ITの進展が部品商の業務を変える

  古い話で恐縮だが、私が自動車補修部品流通業界で取材を始めた当初は、まだ、部販・共販は一部の地区に設立されていただけであった。地区の純正部品流通の要であったディーラー部品部は内販(自社のサービス工場への出荷)、外販(サブディーラー、業販店等への出荷)に忙しく、部品カウンターには部品を購入に来た部品商や整備工場のお客様が列を作っていた。
当時の品番検索は、よく動く車検部品等は紙カタログであり、それ以外の、めったに出ない部品はマイクロフイッシュである。紙カタログは車種別、品目別の作られており、その量は膨大でフロント後方のロッカーにも入り切れず溢れていた。マイクロフイッシュは正直、目が悪くなるんじゃないかと思う程、鮮明さに欠けており、膨大なフイルムの中から目指す部品が掲載されている一枚を選び出す部品マンの手際の良さに驚いたものである。
 在庫管理もまだバッジ処理の時代である。カーデックスからオフィス・コンピューターに移行していた時代で、部品出荷が集中すると係りの記入が間に合わず、自社の在庫が正確に把握できないケースが発生した。経営者が部品業務の理解がないと「人手不足で困ります。在庫情報の更新が一週間遅れているんですよ」といった話も出てきた。
 80年代の中盤から始まった部品業務のオンライン化と品番検索システムの導入は部品業務の革命であった。不確実な要素が多く、プロの勘に頼っていた部品業務が、正確でリアルタイムな情報提供が可能になった事で、一挙にグレードアップした。
 同様にプロの領域であった品番検索も、必要な情報をインプットすれば誰でもできるようになった。ディーラーではサービスのフロントマンやメカニックが自ら品番検索して注文することが普通になった。特に故障修理などは、メカニックが電子カタログを自分で見て、必要な部品を確認するため注文漏れが減少した。また「交換すべき部品」と「まだ使える部品」は現車を確認しているメカニックが情報をもっている。他人任せで不要な部品まで注文されるトラブルも減少した。
◆整備工場の部品検索は?
 このようにディーラーでは品番検索をサービス部門が直接、実施するようになったが、独立系の整備工場では、いまだに部品検索は部品商に任せている。今までの業界の常識(?)では「整備工場は自分達で部品を検索したいと思っていないし、そうしたニーズはない」「少人数の整備工場で、部品検索までする時間はない」という事だった。
 しかし、整備工場に話を聞くと「部品情報は部品商に握られていて、我々が自分で調べることが出来ないのです」と言った話が出てくる。自動車メーカーの品番検索システムを導入している整備工場もあるので「部品商に握られている」というのは誤解であるが、整備工場の思いは、決して品番検索に後ろ向きではない。また、忙しくて時間がない割には解体業者に中古部品を探しに行ったり、ベアリング屋にメカニックを走らせたりもしている。安い部品を仕入れるには極めて熱心で、品番検索ニーズが無いとは思えない。
 現在、純正部品の流通では、部品情報は部品メーカーから自動車メーカー、部販・共販、ディーラー、地域部品商までオンラインで繋がっているが、最終供給先の整備工場との間が切れている。優良部品の方も部品卸商と部品商まで繋がっているが、整備工場との間は切れている。今後は、この間を繋ぐシステムが必要になるだろう。
 これは部品商にとっても業務改善に繋がるだろう。今まで部品商は整備工場からの部品注文にきめ細かい配送で応えてきたが、この多頻度の配送が経営の負担になっている。また、整備工場の販売サポートなど高度なサービスを行う余裕を失わせているからだ。すでに、一部の部品商では整備工場に部品在庫を置き、オンラインで部品の受発注を行っている。今後、こうしたシステムが徐々に広がっていくと思われる
 そして部品商の業務も、配送をベースにした便利屋から、よりクリエイティブなリテイルサポートを主体とする形態に変わっていかざるを得ないだろう。(編集長・白柳孝夫)