経済のソフト化、急ピッチで進行中

最近の新聞・テレビの報道によると、日本経済は大変な危機を迎えているようである。80 年代末のバブル景気の崩壊から、失われた90 年代を経て、ここ数年はデフレ・スパイラルの危機が迫っているといわれる。そして、こうした危機への処方箋は、相変わらず財政出動、金融緩和、規制緩和という使い古された三種の神器である。しかし、本当の危機は、こうした分析と対応策しか出てこない構造にあるのではなかろうか。
経済は実態経済と金融経済の2つがある。金融経済は実態経済の「鏡」のような顔をしているが、実際は独自の原理で動いている。
金融経済の分析家は常に日本経済全体を分析しているように振舞うが、使用している指標は旧態依然としていて鉱工業生産指数、消費者物価、設備投資動向、貿易統計等である。彼らは指標そのものを細かく分析するが、この数値が出てきた背景については常に素人的な説明を付加するだけに終わっている。
一方、実態経済の分析家は自動車業界、運輸業界、通信業界、建設業界など、それぞれの専門分野に特化・精通し、優れた市場動向分析を行っているが全体の市場を分析・把握する視点を持っていない。このためマクロ経済の分析は金融経済の分析家の説をそのまま無批判に受入れている。おそらく日本の経済分析が現実を変革する上で、あまり役に立っていないのは、金融経済と実態経済の分析家が何の接点も持たず、乖離しているからではなかろうか。
それでは実態経済の状態はそれ程、悪いのであろうか?
日本のGDP(実質)は 90年の464兆円から 95年の497兆円までに 33兆円伸張した。さらに95 年から 00年の534兆円まで 44兆円伸張している。これは 10年間で約 15%の伸びという事になるが、この間のわが国人口の伸びは約5%であり、経済の成熟化を勘案すれば、かなり健闘したのではなかろうか。もちろん、それ以前のバブル期の伸張率に比べれば伸び率は大幅に鈍化している。また、毎年必ずプラス成長ではなくマイナスとなる年もある。右肩上がり経済の時代が終わり循環型経済になったのだから当然のことである。
現在、日本経済の最大の問題点は「需要が無い」事だといわれる。戦後の日本経済を支えたのは旺盛な民需であり、洗濯機、冷蔵庫、カラーTV、エアコン、自動車、住宅と次々に大型市場が成長した。しかし現在、多くの国民はその殆どを所有しており、新たに欲しいと思う大型商品が見当たらない。消費市場は成熟しているのである。
上表は経済活動別にGDPの推移を分析したものである。これで見ると最大のボリュームを持つ製造業が、工場の海外移転等で微減となる中、サービス業が急速に成長しているのがわかる。
一方、卸売・小売業は 95年までは高い成長率を維持していたものの、 95年からは減少している。これは製造業が海外に工場を移した事とも関係するが、特にアジアからの輸入品の増加による単価の下落と思われる。
良い商品が安く手に入るようになれば消費者はそれを選ぶのは当然であり、これがデフレの正体ならば誰も止めることは出来ない。低価格化による市場の縮小に対処するには小売業が単なる物販業から、専門的な技術・情報を付加したサービス業に進化することだ。
90年代に経済のソフト化は急ピッチで進んだ。アフターマーケットでもサービス業を取りこんだ小売業が伸びている。今後も安定した成長を望むなら市場分析に基づく物販のサービス化を進めるしか手段はないと思われる
(編集長・白柳孝夫)。