補修部品市場は本当に成熟したのか
需要は保有台数の中に眠っている。

  95年の規制緩和以来、整備市場の価格競争が激化し、補修部品市場は長期にわたり低迷している。本誌恒例の「自動車メーカー各社の補修部品・用品売上動向調査」によると、補修部品の売上は 年の7328億円をピークに 年は6902億円と426億円もダウンしている。これを保有台当りで見ると 年をピークに減少に転じ、 年まで8年間でなんと %も減少した事になる。保有台数が微増を続け、タイヤ、バッテリーなど自動車メーカールートの取扱商品が拡大しているので、この大幅減はいくらか「緩和」されて見えるが、保有台当り年率2・5%の減少は補修部品業界にとって深刻な問題だ。
 さて、この減少の原因だが、「部品の品質が向上すれば補修部品の需要は減少するのだから長期低迷はやむをえない」と言う見方がある。しかし、品目的に分析すると、どうも一概にそうとは言えないようだ。補修部品の中で需要が減少しているのは外装部品と消耗部品であり、品質と関連する機能部品は車齢の伸びや整備不良車の増加により微増で推移している。
一方、外装部品については事故が急速に減少したと言う話は無いし、自動車の稼動と関係する消耗部品も、年々「ユーザーがドライブをしなくなっている」という話は聞かない。これらの部品は保有台数に比例して微増というのが本来の姿であろう。
 92年以降の外装部品、消耗部品の需要低迷は市場構造の変化によるものだ。外装部品は自動車保険制度の改定、消耗部品は 年以降の規制緩和を契機に減少に転じている。その後もこの状態が続いているのは「新しい市場環境に従来型の販売体制が対応できず本来の需要を掘り起こせずにいる」とも言える。
 今後、補修部品市場の活性化を図るためには新しい市場環境を把握しマーケティングに基づき販売戦略を再構築する必要がある。
 例えば 93 年以降、車両保険の免責金額が上昇、小さな事故では保険が使えなくなっている。その結果、凹んだり小さな傷のある保有車両が増加しているが、ユーザーは「それでいい」と思っているのではない。リヤをちょっとぶつけて、テールランプのレンズが割れてしまったが「どこに修理を依頼すればいいか分からない」というユーザーもいる。先日、弊社のホームページに一般ユーザーから「レンズの価格はどれぐらいか」「自分で交換できるのか」「部品はどこで購入できるのか」という問い合わせがあった。調べてみるとレンズの価格は意外と高く、さらに交換にも防水処理などコツが必要な事が分かったので「ディーラーか整備工場に依頼した方が良い」と伝えたが、こうしたユーザーが「どれぐらいの価格なら気軽に部品交換を依頼する気になるか」は研究テーマではなかろうか。米国の部品販売店でリヤのレンズがブリスターパック入りで販売されているのを見たが、こうした小破部品は潜在需要が大きいかも知れない。
 一方、消耗部品は車検時の同時交換が減少しているが、どれぐらいの価格ならユーザーが喜んで交換してくれるか調査する必要がある。多くのユーザーは、「いつかは交換しなければ」と思っている。それなら負担しやすい価格を提示して交換促進することで、総需要を伸ばすことが可能かもしれない。
 また、インターネットは消費者の情報収集量を飛躍的に向上させた。「ユーザーは部品について知らない」「価格について興味がない」という業界側の思い込みと、ユーザー側のニーズに大きなズレが生じはじめている。
 今後の補修部品ビジネスでは「消費者への販売価格戦略と価格情報の提供」が決め手になるだろう。  

(編集長・白柳孝夫)