100円ショップの経済学

日本にも低級品市場が出現した !

 ここ数年で日本人の消費行動は大きく変化した。「日本人は品質にこだわる」「商品は価格が高い方が売れる。安物は売れない」「新品を好み、中古品は嫌がる」といった、かつての「常識」はもう通用しなくなった。
 ブランドにこだわる人達は確かに存在するが、バブル期のような過剰なブランド信仰は影を潜めた。海外旅行に出かけてもブランド品を買いあさる日本人は少なくなり、日本人観光客相手の商店街は打撃を受けている。
 一方、国内では最近、大型100円ショップが次々に開店している。
ここで販売されている商品は、小売価格100円という設定の中で店舗側もメーカー側も必要な利益を確保して商品化されている。従来のディスカウントストアのように流通過程で発生する不良在庫を格安で仕入れ、目玉商品として販売する形態ではない。
 この場合は従来、高値で売られていたものが売れ残りや決算処分等の理由で破格で流出したのであるが、100円ショップの商品は、まず販売価格を決めてから開発されている。このため100円ショップのビジネスは薄利多売であるが「ぎりぎりのムリしたものではない」という。小売店の利益率は 30%程度確保されているし、協力メーカーもぎりぎりの利益率の中で苦しい商売をしているわけではない。
 最近の消費者は自分のこだわりのある商品については、価格が高くても満足できるものを選ぶが、普段使いの日用品については、問題がなければ低価格の三流品でも良いという人が増えている。
 この点で高級品、中級品、廉価品と明確に市場が分かれている米国と似てきているのだ。
 100円ショップでもうひとつ注目されることは店舗の大型化である。この業態は当初、主にデパートやスーパーなどの特設会場で数週間程度の催事として始まり、その品揃えもそれほど充実したものでは無かった。しかし、その後、小規模の独立店舗が各地に開店。やがて店舗面積は急速に大型化して、今では100〜200坪以上の大型店が主流になり、商品アイテムも4万点を超えている。
 この100円ショップの価格の秘密は、自社ブランドのオリジナル商品を100万個から200万個単位で大量発注することにある。
 大量発注した商品を大量に売りさばくには急速に多店舗化を進めなければならない。現在、この業界のトップを走っている大創産業(本社・東広島市)は 77年の創業だが、 98年度後半からは1日1店舗超のペースで出店しており、現在は総店舗数約1300店(直営・FC店合計)となっている。また、売上高も 95年度322億円から 99年度1200億円へと飛躍的に伸びている。
 この100円ショップのルーツは米国のバラエティストアである。店の商品を全て1ドル均一とすることで、顧客は価格を気にせずに商品を選ぶことができる。
 また、店の方もレジが極めて簡単で、数が数えられれば誰でも会計ができる。人件費を削減してローコストオペレーションを実現するのに適したシステムだ。日本の100円ショップでもPOSシステムを導入せず、購入する商品数を数えてレジを打っている。
 世界一の流通業者となったウォルマートの創業者、サム・ウォルトンも最初はバラエティストアの経営者としてスタートした。この時期に入手した低価格での商品の仕入れノウハウとローコストオペレーションが、後のディスカウントストアの経営に役立ったのである。
 日本の100円ショップが、今後、どのようになっていくのかは未知数である。しかし、小売価格を最初に決めて商品を開発する仕組みは、長い流通過程を通る中で次々とコストが積み上がる日本的流通に一石を投じるものだ。
 特に現在にように閉塞した販売環境を打ち破るには、各商品について「売れる価格」「需要が伸ばせる価格」を調査し、この価格に合わせて商品、物流、店舗のあり方を根本的に見直していくことが急務と思われる。
(編集長 白柳孝夫)